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恋色空模様 所感

  • 前情報

株式会社グリーンウッドのエロゲブランド、すたじお緑茶の7th Projectである本作。所謂孤島の田舎を舞台とし、そこで育まれる友情愛情を描くと言う何ともお決まりなシチュエーションである。基本的なところはここまでで、あとは公式ホームページのストーリーを確認してね!(説明放棄)

  • シナリオ

区切りがよく第○話構成であり、1話平均約1時間で話が進んでいく。20話までが共通ルートであり23話までが個別ルートで組み立てられている。つまり1ルートだけでも個別が話全体の8割を占めている。その共通ルートも島の日常を描く第1部と、通っている学園の廃校問題に主人公が立ち上がる第2部の二部構成であり、普通の学園モノとは一線を期す話であることは明らかである。ヒロインとのイチャコラを楽しみたいと言う人には少々物足りないかもしれない。
それに主人公がまさにエロゲ然としたムッツリスケベな変態である上に不自然にモテる(ように見えてしまう)ので、そのあたりの細かい部分が気になる人には適さないかもしれない。

  • CG

原画のるちえさんに限らずサブキャラ陣も見事に見た目で差別化が図られている。以上に緑茶チームの塗りにより、るちえさんのデフォルメ化されたかわいいキャラたちがエロく見せられるのだからかなり評価が高い。とにかくヒロインたちが揃いも揃ってかわいく描かれているのだからそれでよしである。
立ち絵では夏服なのにイベント絵では冬服であるなどの明らかな矛盾が生じていたのは、少し辟易するが、それさえもるちえさんの原画の前では平伏せざるを得ないだろう。。

  • 演出

実はこのエロゲは半年もの延期の末に発売されたのだが、それはこの演出面を強化するためだったのではないかと疑うほどにこだわり抜かれている。まさかちゃぶ台を登場人物計11人で取り囲む立ち絵など誰が想像しただろうか。キャラクタたちがアクティブに動いて殴って回って飛んでいくさまは眺めていて飽きない。それに留まらず背景の波打ち際や扇風機も連動して動いているのだから、これはもう職人技の域に達していても過言ではないだろう。他のエロゲと一線を期している。

  • 総合

共通ルートがあまりにも長いので中だるみしすぎる危険性もありますが、普通の学園モノとは違うことだけは確かであるので、イチャコラに飽きてきた人には是非プレイして欲しい一品である。スタンダードを踏襲しているようで、その実天邪鬼と言っても過言ではないエロゲなので賛否両論は避けられないところかもしれない。

公的な宣伝レビューのつもりの文章はここまでとして、以下所感。


実際のところ、かなり話すことに困る作品である。
主人公である誠悟は体面だけ見れば普通の学生であるが、そのポテンシャルはかなり高い位置まで占めている。きちんと与えられた情報を咀嚼し、最適解を最短距離で導き出しているその頭の作りを見習いたいくらいだ。その能力は第2部である廃校問題を契機に遺憾なく発揮され、次々と巻き起こる問題に対して誠悟は必至になりながらも、やはり最適解へとたどり着いてしまうのだ。
そんなことが形を変え所を変え品を変え、あらゆる形で誠悟を追い詰めようとも、誠悟は全てをどうにかしてしまう。まるで彼自身が問題を解決するのが宿命付られているかのようにトラブルが、彼自身の行動と思考によって、あるいは直接誠悟が介在しなくとも外的要因によって次々と解消されてしまうのだ。仲間を増やす段階にしろ本人を言いくるめるよりも本人の関係者によって誠悟に集まってくるような描写は、正直な話薄ら寒さすら覚えるほどだ。
それはまさに物語の持つスムーズな話運びを求める強制力以上の、言わばハッピーエンドへと導くことが存在意義であるかのような印象をプレイ中に何度も受けた。誠悟を中心としてご都合主義で何もかもをどうにかしてしまう神様のようなもの…デウス・エクス・マキナが常駐しているような状態なのだ。プレイ中どんなトラブルが巻き起ころうとも「きっとなんとかなるさ」と思わせてしまうほどの安心感が常に背後に付き纏ってしまう状態になってしまっているのだ。誠悟自身がデウス・エクス・マキナに祝福されており彼自身のために舞台が強制力に則って整えられることと同義ではなかろうかと疑ってしまうほどに。そのための廃校問題であるとも受け止められるし、そのためのわかりやすい現実側の悪役として有馬が出張ってきたのも頷けるというものだ。
実際、それは間違っていないのかもしれない。

  • 佳代子、聖良ルートにおける延長戦

佳代子ルートにおいて、彼女自身が元々暗殺者の家系であることが証明されており、有馬の用心棒であり彼女の兄である岡本が佳代子を本家に連れ戻そうとする=過去が追いかけてきた状態が構築されており、そして聖良ルートでは芹沢教論の妄執と勘違いに憑かれた島への復讐劇=廃校問題で浮き彫りになった土着問題への遺恨が構築されている。
この2ルートの共通点は、どちらも共通ルートにおける悪役であった有馬がバックに再び登場したことだ。有馬は佳代子の兄の雇い主であるし芹沢教論と結託して土地を手に入れる立場にある。まさに共通ルートのトラブルの消化試合であり延長戦であると言えるだろう。
しかしこの延長戦においても、ご都合主義の神様は遺憾なく性能を発揮することになる。結果として佳代子は過去の因縁を断たれたし、聖良によって土地の利権問題は一応の解決を見せることになった。前者においては誠悟に最も最初に影響を受けたヒロインであるので強制力は半端じゃないものだった。本人の意思が最悪の結末を導こうとしているところで誠悟によって最適解に辿着き、後者においては土着問題の象徴である芹沢教論のアイデンティティすらも打ち砕いてしまった。物語がハッピーエンドに無理やり修正されるさまを見せつけられた気分だった。

  • 彩、静奈の将来性

加えて彩ルートと静奈ルートだが、こちらにもご都合主義の神様は出張って来ているのは間違いない。だがこれまでと少し意味合いは違ってくる。
双方の共通点は、どちらも誠悟の将来を決めるような問題が自然発生的に降りかかってくることだ。彩の場合それが姉の出産時における台風騒動によって具現化している。命が誕生するか否かの逼迫した状況の中でも誠悟は全力を尽くし、命を守り通すために力を尽くす彩をサポートをすることになる。その経験を受けて彼自身で進学という進路を選びとっていく。それはこれまでご都合主義に身を任せてきた誠悟にとって初めて自ら選択したと言えるものではないだろうか。
一方静奈ルートの場合本人が島の将来を鑑みることを約束することで将来が決まっていく。静奈本人が自らを籠の中の鳥と称して自らを律し、将来すらも約束されないことを自らに定義付けているのは共通でも見受けられた描写だが、それが個別ルートで恋人関係に昇華しても解消されていないことが一番のネックだ。そのネックこそが浮き彫りになった問題であり、誠悟によって解消されるべき問題であり、誠悟本人が将来を選びとる可能性を掴むことが既に約束されている状態なのだ。
どちらもご都合主義の神様が共通ルートで機能していた誠悟自身の将来に関わる問題で発揮されており、全く正反対の方向性に結論を導き出している背反の構図は実に見ていて興味が湧いてくる。彩では天災として降りかかり、静奈では兼ねてよりあった問題が具現化しているのだから、鏡合わせと題しても違和感はないだろう。

  • 美琴 〜 神様が鳴りを潜める日

さて、最後に美琴ルートであるが、これまでの話の中で一切絡んでこなかったのは一体どういう事だろうか。言うまでもなく、他の個別ルートでは美琴の父親の研究実験が成功することが確約されており、美琴はそれに付き添う形で神那島と言う誠悟に祝福された舞台装置から退場することとなっていた。
しかし、その転落せざるを得ないヒロインをヒロインたらしめるためには一体何が必要であったのかと言うと、実に簡単なことだ。その退場させられた原因をなくしてしまえばいいのだ。つまりこの場合美琴の父親の実験が実験に漕ぎ着けられない段階にまで後戻りしてしまえばいいのだ。美琴を神那島と言う舞台装置に縛り上げるには、もはやそれしか選択肢はなかったとも言える。
それによって浮き上がった問題は、何も義理の兄弟間の恋愛に留まらず、研究が進まないことと改ざんの事実の板挟みによって二人が神那島からいなくなるか否かの二択にまで落とし込まれている。ここで一つ着目して欲しいのは、この案件が誠悟によって解決を見るための問題としてではなく単純に元々あった家族の問題が美琴一人によって浮上してきている点である。それまでの個別ルートで発生した問題は、全て誠悟の預かり知らぬところで自然発生的してきた案件のみだった。過去の追想にしても土着問題にしても、台風時の出産にしても自ら縛り付けたネックにしても、それらはヒロインの側からもたらされて、なおかつご都合主義の神様により誠悟が解決することを前提としてのトラブルであった。
しかし美琴の場合は違う。確かに彼女のために問題が発生しているのは明らかである。しかしそこにはご都合主義の神様が介在する余地などありはしないのだ。元々解決するための諸問題が他の個別ルートでは外部からの問題に委託することで有耶無耶になっていたところを、本来ある自然な流れの問題に直面させただけなのである。
遅かれ早かれ向きあうべき家族間の問題を自然発生させることこそが、美琴をヒロインへと昇格させるために必要なプロセスだったと言えるのだ。そこに約束された勝利は介在せず、ただ本来の流れを取り戻した家族の姿があるだけなのだから。

  • 総括

全体的な感想としては、勝利が約束された舞台装置を演出するために誠悟がいるようなものであり、プレイ中と言うかプレイを進めるごとに妙な安心感に支配されてしまい、素直に楽しめなかった気来があることは認めざるを得ない。ただそれでマイナスかと言うと、必ずしもそうではない。ハッピーエンドを約束されているものほど靡かないものもないが、ハッピーエンドを約束されているほど清々しいものもないのだ。素直に幸せと余韻を噛み締めたいところだ。特に美琴である。予め用意された舞台ではなく本来取り組むべき問題を表面化させて、なおかつ解決を導き出すことほど爽快なことはないだろう。最後の最後で、実に楽しかったと心から言えるエロゲも、ここまで思うところもあるエロゲも珍しいだろう。
ご都合主義の神様に祝福された島に恐怖と幸せを見た。

  • おまけ

やっぱり聖良が一番エロイと思うのですがそこんところどうなんでしょう?