私家版『あなたにとって「自分の人生に影響を与えた10曲」は?』

  • 前置き

あなたにとって「自分の人生に影響を与えた10曲」は?(Zephyr Cradle Another)

というわけで久しぶりの分家ブログ更新ネタとして、Zephyr Cradle代表の大臣さんから投げかけられたテーマ日記に返答する形で自分にとっての人生に関わってきた10曲を取り沙汰していきたい所存であります。なんだかんだで22年以上生きてきた上で影響を受けた物、と一口に語るとあらゆる創作物が該当するものですが、その中から特筆された音楽だけ抽出するというのは実に疲弊するものでして。一概に「人生への影響」と掲げたとしても、プレイしてきたゲームで耳心地のよいBGMとだけ定めればそれこそ100曲はざらと見つかるものなので。
だからこそ今回のテーマ日記ではもっとミクロな分野で定義しようと心がけました。すなわち今日までの自分に到るまでのターニングポイントとしての意味合いが強まるもの、音楽の嗜好に大きな影響を与えたものや、それこそ人生を生き抜く上での応援歌として啓蒙された楽曲に絞ることにしました。しかしそうすると24時間以上も考えた末にようやく絞り込めるというこれまでの道程の薄弱さを実感して泣きたくなってますが、それはまぁ別にいいでしょう。
前置きが適度に冗長になりましたが、ようやく公開いたしましょう。以下が今の自分に繋がり連なっている楽曲群です。

  • TORIDGE & LISBAH/DREAMS COME TRUE

母親が保育園へ送迎する際に車の中で流していたカセットテープから聞こえてくる、DREAMS COME TRUEのDELICIOUSが恐らく記憶を辿る限りでは初めて「音楽」と認識した最初のメディア。その中でも特に底抜けに明るくキャッチーな曲調、かつ当時の自分を刺激するおとぎ話チックな「トリじいさん」と「リスばあさん」のフレーズを採用したこの曲が特に印象に残っている。

  • STEPPING WIND/柿埜嘉奈子

風のクロノア2より。本音を言えばこれまで聴いてきたゲーム音楽は数知れないし、その中でも特別印象に残っているものくらいならいくらでも列挙することが出来る。しかし数ある楽曲の中で突然のボーカル挿入で度肝を抜かれたこと、かつ「曲を聴くためにステージをプレイする」という経験を自主的に何度も行ったのはこの曲が流れるステージである「ミラ・ミラ大雪山」が記憶にある限り一番最初である。元来添え物であったはずのゲーム音楽がメインに逆転した瞬間だった。

自分史の中でも避けては通れない物語経験として挙げるべき映画に殿堂入りしている劇場版ナデシコであるが、主人公機であるブラックサレナが本領を発揮するシーンで流れたBGMのあまりの鮮烈さと、56秒弱に全てが圧縮されているその密度の濃さに惚れ込んでしまった。これ以降アニメにおける劇伴の重要性に初めて意識を向けることが出来たと言えるだろう。劇中でブラックサレナの名を冠するBGMは全部で3曲3場面ほどあり、流れた順番を鑑みれば厳密にはブラックサレナⅡとなるのかもしれないが、その中でも特に最終決戦時のアレンジと盛り上がりは映画そのものの山場も相まって特筆すべきものがある。

自らの音楽嗜好を決定づけるための重要な要素として、I'veの存在は絶対に外せない。I'veの魅力に目覚めて以降それが全ての基点となり、アッパーなトランスから反復に終始するテクノ、バラードやポップスなどとにかく広い分野を手がけるI'veの音楽性に感化されていくことにより音楽を聴き込むための土俵が出来上がっていった。I'veがなければこれからも音楽に対して能動的になっていないと言っても過言ではないだろう。その自分にとって初めてリアルタイムでI've…というよりもKOTOKOという歌手を意識した、今後のI'veへの傾倒に向かうための起源である楽曲を今回は挙げさせていただきたい。

正直に白状すると、ゲームよりも先にTVアニメの放送で触れたのがAIRとの初遭遇だったのだ。しかしそれでもOPに使用されたこの曲を映像と共に身体に取り入れたその時、まるで何かの啓示を受けたかのような衝撃を受けた。朧気ながらそこには深淵かつ神聖な何かが宿っている気がしたのだ。これまで聴いてきた音楽の全てが映像を追うごとに霞んでいくようだった。これが自分にとってのKey初遭遇であったのだが、しかし悲しきかな原作がゲームだと知るのはここより約半年もの月日を要することになる。

  • A ONE SCIENTIST'S MELANCHOLY/FISH TONE

先述でI'veが音楽における全ての起源であるとは説明した通りであるが、それはボーカルに限った話でなくインストを聴く際にも例外ではない。それまでの自分にとって音楽とはボーカルが付与されて当たり前のものでしかなく楽器のみの音で構成された楽曲への耐性が全くなかったのだが、I'veという団体を知ったことでインストへの興味も一定数持ち合わせるようになっていった。その中でも特別聴き込んでいたのがこの曲である。80年代製のシンセサイザーの音が実に心地良く耳に響くと同時にボーカルの有無と楽器の時代性には垣根などないのだとようやく自覚するに至った曲でもある。

  • はだかの足で走れ/ゆいこ

何故これなのか、という疑問はファンの皆様なら間違いなく抱くであろう。デスクトップアクセサリーおまもりんごさんとのタイアップ曲の一つであるが、この曲が収録されたシングルを入手した場所が他でもない、自分が初めて参加した同人音楽即売会である大阪M3なのだ。当時はFISH TONEの楽曲が収録されるCDを目当てにした完全なI've中心の行軍であったが、会場内を練り歩く中でジャケットに惚れ込み衝動買いしたのがこの曲なのである。そしてこれ以降同人音楽という土俵に改めて惚れ込み、本格的にCDを蒐集していくことになる。新たな無間地獄の始まりであった。

発表予定の楽曲の中では、特別人生の価値観までも変容させたとは到底言えないかもしれない移植のチョイスである。だが最初にこの曲を聴いた時以降に分けてもらったエネルギーと元気は数知れない。これまでの楽曲が人生を変えた楽曲なら、これは人生を継続していくために影響した楽曲として位置づけられるものであろう。ストレスフルな環境に身を置くことになっても笑顔とパワーを詰め込んで明日の為に歌うのさ、そうした救済があってもいいじゃないか。

  • レトロスペクティブ札幌/D.watt

IOSYS/東方乙女囃子収録。同CDで最も有名なのは間違いなく「魔理沙は大変なものを盗んでいきました」であるだろうが、純然たる曲調の好みとしてカウントするならこの曲を選ぶことにする。加えてこの曲を通すことで自分の中に東方アレンジなる分野への忌避感が薄れると同時に新規開拓の可能性を垣間見ることが出来たのも今回選出された一因である。以降札幌生まれのレトロスペクティブはnomicoのBad Appleへと繋がっていくことになる。

現在進行形の事態の一つ。昨年8月にすい臓がんで夭折した今敏監督の訃報を目にしたところ、これまで名を知りつつも作品に目を通していなかったことに気が付いた。そこで関連作品を調べる折に目にした「妄想代理人」のOP映像を見てしまったのが運の尽きだった。只管不気味な状況で笑い続けるあの映像と過剰なまでにシンクロする電子音のオーケストラと不安を誘いつつも安堵感を抱かせる声音。それら全てが調和を揃えているさまは衝撃に近く、その衝撃は一気に監督作品全体への興味に取って変わり、同時に彼が愛したヒラサワという得体の知れない音楽に触れる機会が必然的に多くなっていった。底の知れない人間性以上に何よりプログレッシブ・ロックを基本にパンクな精神を宿しつつも無機質かつ人間味溢れた音楽性に惚れ込むのはそんなに長い時間を要さなかった。その影響は現在も続いている。


以上、今までの人生を彩る楽曲たちでありました。これが読者のキッカケの一つになってくれればこれ幸いである。